一つ前⬇︎
能力者しりとりバトル 1回戦 ぺけぴー vs ロイックス - 畢竟ドラゴンクエスト
「わんわん!」
「おーい待ってよケンター!」
「ばうわんこ!」
「はぁ、はあ・・・どうしたんだよ、いきなり走り出して・・・はっ、ここは?」
鬱蒼とした森の奥深く
底気味悪いオーラを放つ洋館が立っていた
年月に風化し今にも剥がれ落ちそうな石壁には茶色い蔦が這い回り、
そしてその蔦すらも干からび朽ちていた・・・
フィスはその異様な雰囲気に、ごくりと唾を飲み込んだ。
「な、なんだろここ・・・」
「わふわふ!」
「こ、こらケンタ!入っちゃだめだよ!」
ケンタは尻尾をふりふり、館に入って行ってしまった。
フィスはおっかなびっくり、ケンタを追いかける。
「す、すみませ〜ん・・・おじゃまします・・・」
すえた苔の匂いのする石畳の路を進むと、館の玄関が見えた。
フィスはそこに、怪しげな仮面の男が立っているのに気づいた。
「ややっ」
仮面の男はケンタに向かって話しかけているようだ。
「あなたも参加者ですか」
「わん!」
「なるほどそれでは能力名を・・・ふむふむ・・・バウワンコ・・・これは面白い・・・それではどうぞ中へ・・・」
仮面の男にいざなわれるようにして尻尾ふりふり館に入っていこうとするケンタ。
フィスは飛び出した。
「ケ、ケンター!」
「おや、あなたも能力者ですか」
「の、能力者?僕はケンタの飼い主です!ごめんなさいうちのケンタが・・・」
「ほう・・・つまり、さらに貴方は彼を統べるもの・・・さらに上位の能力者・・・ということですかな?」
「は?」
仮面の男はケンタに向きなおる。
ケンタは目を閉じ、首を縦に降った。
「わっふん」
「やはりそうですか・・・」
「いやあの・・・すみませんよくわからないんですけど、ここで何かあるんですか?」
「おやおや・・・知らずに来られたんですね・・・。今日、ここで最強を決める戦いがあるのですよ・・・」
「最強」
「そうです、その戦いにこのケンタさんが出場することになりました」
「やってやるぜ」
「いやいや!ちょっと待ってくださいケンタがそんな最強だなんて、ってケンタ今しゃべらなかった?」
「ケンタさんの戦い・・・飼い主である貴方は見守る権利があります。良いでしょう、お入りください」
「さ、さっぱりわからないけど・・・ケンタ大丈夫なのかな。ケンタが出るっていうなら、僕も見学させてもらおうかな・・・」
「ワン」
「何・・・ケンタさんそう言いますがしかし・・・いや、確かに、そうですね」
「?」
「ケンタさんは、『最強を決めるということであれば俺よりも上位の能力者であるフィスが出場するべきではないか。悔しいが俺の能力は未だフィスに及ばない。今回は断腸の思いで出場をフィスに譲るよ、俺の分まで頼むぞフィス、・・・絶対に負けるんじゃねえぞ』と言っています」
「今ワンって言っただけなのに?」
「良いでしょう、それではケンタさんに代わって貴方の出場を認めましょう」
「ねえ聞いてる?え、ワアアちょっと押さないで何するのアアアア」
突如現れた黒服の男たちに囲まれたフィスは、そのまま館の中に押し込められる。
ケンタは嬉しそうにそのあとをついていくのだった。
「ワン!」
時はいくばくか流れ。
16名の参加者のうち、1回戦第7試合までが終わった。
7名が2回戦に駒を進め、 1人が亡くなった。
そして最後のベスト8進出をかけた戦いが始まろうとしていた。
「第8戦!予選ラストです!能力者はじんないいぃぃぃ!」
「はーい!よろしくおねがいしまーす!」
ステージの外から、歓声が聞こえる。
フィスはぐっと両手を握った。
わけがわからないままここまで来ちゃったけど、僕も男だ!頑張ってみるぞ!
「そして最後の能力者!フィスゥウウウウ!」
「がんばれよ」
ケンタの後押しの中、ステージに飛び出すフィス。
飛び交う歓声と、異様な熱気の中、ステージに向かって叫んだ。
「参加のつもりが見学になった者です!あ、逆か。見学のつもりが参加になったものです!!w」
ドッと沸き起こる笑い声。
てへ、という感じで、フィスは頭をかく。
そして対戦相手に向き直った。
じんないと呼ばれた方だ。さっきまでもう一人のウェディさんと一緒にいた人だったけれど・・・どんな能力者なんだろう。
あれ?そういえば、もう一人のウェディさんはどこにいったのかな。戦いのあと、戻ってこなかった気がするけれど・・・。
そんな疑問に頭を巡らす間もなく、仮面の男が開戦を告げる。
そのときはまだ、フィスは対戦相手の目に宿る狂気に気づいてはいなかった。
一回戦第8試合
じんない vs フィス
「それではじんないから先にどうぞ!」
「たきつぼ」
その瞬間、いつの間にかじんないの傍に置かれていた、棺桶がガタっと音を立てた。
棺桶の中で、ガタ、ガタ・・・と何かが跳ね回るような音が聞こえる。
「能力発動!じんないの能力「まってまって」が発動しました」
能力名「まってまって」
イコプのお腹が空いたら発動。以後の全てをロイックスになすり付ける。
「お、おい!あの棺桶!動いてるぞ!」
「あの中には・・・さきほど亡くなった方が・・・納められていたはず・・・ま、まさか・・・じんないって・・・」
「・・・ネクロマンサー・・・!!」
騒然とする会場。
じんないは笑っていた。
天を仰ぎ、両手を広げる。
さあ、ロイックス・・・お前の力を・・・見せてやれ・・・・!
「以降、すべての発言はロイックス選手になすりつけられます」
「なので代わりにロイックス選手が答えてください」
「やめろおおおおおおwwww」
し、死体が喋ってるってこと?
フィスは怖くなった。幽霊とかそういうのはもうめちゃくちゃ苦手だった。
固まったフィスに司会者が促す。
「ではフィス選手、ぼ、でどうぞ!」
「ボス」
「スコップ」
しゃべったー!
棺桶から死体がしゃべったー!
もうだめだ怖い帰る。
「プランさん」
「フィスOVER!!ロイックス選手の勝ちです!」
「俺じゃなかった!」
フィスはふぅーと息を吐くと、ぺこりと頭を下げた。
よし帰ろう、と思った。
「フィスくんの能力は「スペル・オブ・ドッグ」。誰かが途中で座るのしぐさをしたら犬の名前でしか答えられなくなる、でした」
「かわいい」
「これはほっこり」
「それでは、これで1回戦は全て終了しました」
「2回戦にまいりましょう!」
更けていく平日の夜。
戦いの夜はいよいよ佳境を迎えようとしていた・・・。
「・・・ねえ」
「うん」
「お前の能力、また発動する?」
「・・・」
「なんで答えないの?発動条件、何?」
「俺もこうなるとは思ってなかったよね」
「ねえ!発動条件は何なの!おい!」
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